物は法人、お金は個人

「物は法人、お金は個人」

【闘う商売人税理士森田茂伸のもりもりわかる税の話(NBCラジオ)】2022年12月5日公開分

不測の事態への備え

今回は、規模の小さな家業や中小零細企業に関するお話です。

こうした小さな企業というのは、もともと会社に潤沢な資金があるわけではありません。社長個人もあまり資産を持っていないことが多いのです。

そういった企業では、地震などの自然災害、取引先の倒産といったわずかな損失でも、すぐに経営が行き詰まり、倒産してしまうことがあります。そして、こういう状況のときに銀行へ融資を申し込んでも、なかなかお金は貸してもらえないというのが現実です。

ですから、中小企業というのは、何か問題が起こったときにすぐに資金を調達できるよう、あらかじめ準備しておかなければならないのです。

つまり、会社が儲かって大きな利益が出て、「資金が会社に残りそうだ」といった場合には、そのお金を会社に残すのではなく、社長個人の手元に残しておくという考え方が必要になります。

もちろん、ある程度大きな中小企業であれば、優秀な人材も多く、財務や経理の体制も整っているでしょうから、資金を会社に残しておいても問題は少ないかもしれません。

しかし、中小零細企業においては、財務や経理に明るい人材が少ないことも多く、儲けたお金をそのまま会社に置いておくと、資金に余裕があるように見えて、必要のない設備投資をしてしまったり、無駄なものを購入してしまったり、「ボーナスだ」と言って過剰な支出をしてしまうことがよくあるのです。

つまり、使わなくてもよいお金まで使ってしまうわけです。

「死に金」ではなく「生き金」として使うべき

だからこそ、小規模な中小企業では、余分な資金を会社に残しておいてはいけないのです。商売の基本は「お金」。余分なお金を会社に置く必要はありません。資金の「ゆとり」からくる油断は、経営においてはむしろマイナスになるのです。

中小零細企業は、もっと稼がなければ生き残っていけません。そういう厳しい環境だからこそ、ハングリー精神で仕事に取り組んでいかなければ、小さな会社は生き残れないと私は思っています。

もちろん、資金が「モノ」に変わってしまった場合、つまり設備や商品などになった場合は、それは法人として管理しなければなりません。しかし、お金は「生もの」です。だからこそ、会社に余分なお金を残しておくよりも、従業員の生活を守るためにも、社長がしっかりと管理し、「死に金」ではなく「生き金」として使うべきなのです。

この考え方こそが、「物は法人、お金は個人」という意味になります。

お金を残す目的は何なのか。どんな状況に備えるためなのか。その目的をしっかり理解しておくことが非常に重要なのです。

※この情報は2022年12月5日時点でのものです。

神戸・西宮・芦屋の税理士事務所

Posted by harukayokoyama