M-TAC Consulting Report Vol.78
【森田の思い】 認知症になったら相続はどうなる?
今回は、認知症対策の話です。「認知症対策」というと、「介護」か「老後資金」の話のように思われるかもしれませんが、相続対策の前提としての認知症対策です。
令和5年度の税制改正で、暦年贈与における生前贈与加算の年数が、3年から順次7年に延長されたことで、亡くなる7年前より少し前から対策をすればいいんじゃないか・・・と考えがちですが、実はそれでは、相続対策には遅すぎるのです。
なぜなら、お亡くなりになる前、平均すると10年ほど前に、認知症になる確率が高くなり始めます。認知症になると、その方の財産は凍結されて、生前贈与や相続税対策、遺産分割などもできなくなってしまうからです。
認知症は、この社会状況の中、超高齢化社会の進展によって、問題視されてきています。平成29年に内閣府発表の「高齢社会白書」によると、2025年(令和7年)には、65歳以上の認知症高齢者が約700万人(高齢者の約5人に1人) になり、さらに、2060年(令和42年)には、約850万人に達するとされています。高齢化の進化と共に、認知症高齢者の増加は避けられないものとされています。
今後は、認知症予防の推進とともに、認知症高齢者の介護、自動車事故、行方不明者の増加、孤独死など、 認知症に起因する色んな社会問題に対応していくことになるかと思います。
■認知症とは
「認知症」とは、なんらかの病気によって、認知機能などに障害がある状態の総称です。つまり、認知症という 病気があるわけではありません。認知症は、脳の病変により認知機能(記憶、知識、言語、理解、思考、注意、 計算、判断など)の低下をきたした状態のことで、以下3つの障害があります。
①脳に障害があり、認知機能が低下している。
②意識がはっきりしている。
③認知機能の障害とともに、感情、意欲、行動に変化があり、日常生活に支障が起きる。
高齢になるほど発症のリスクは高くなりますが、あくまで加齢とは別に起こるものとされています。以前は「痴 呆」と称していましたが、2004年に厚生労働省が「認知症」と改称しました。
■認知症の種類
認知症は、大きく4種類に分類できます。
①アルツハイマー型認知症
②脳血管性認知症
③レピー小体型認知症
④前頭側頭型認知症
この内、脳細胞の変化により発症するのが①③④。 脳梗塞や脳出血などにより発症するのが④。
認知症を引き起こす疾患は多岐にわたりますが、老年期の代表疾患は①②が多く、それ以外にも、脳腫瘍、 頭部外傷、内分泌異常、感染症などの異常などによる疾患による認知症もあります。
この中で最も多いのは、アルツハイマー型認知症で、認知症の約7割近くを占め、次いで、脳出血性認知 症が約2割近く、レピー小体型認知症が約5%弱となっています。

■認知症になるとどうなるのか
認知症によって、判断能力が低下・喪失すると、認知症になった人の財産が「使えなくなる」「動かせなくなる」、 つまり「凍結」されることになります。
具体的には、預貯金の引き出し、定期預金の解約など ができなくなります。不動産なら、売却、賃貸、修繕、リ フォームなどが難しくなります。たとえ子供でも、親が健 在なうちは、親自身しか財産の管理・処分などができま せん。
事前に対策をしてなかった場合、事後的にできるのは、 「成年後見制度」のうちの「法定後見制度」を利用するし か出来ないのです。

最近、増加しているのは「老老相続」の中で、相続人が認知症になっているケースです。
遺産分割協議は、相続人が全員で行なうのですが、例えば、母が認知症の場合は出来ませんし、母が判断 能力のない状態で遺産分割協議しても、無効となり、被相続人である父の相続財産は凍結されてしまいます。 「法定後見制度」を利用することによって、家庭裁判所により選ばれた法定後見人が、遺産分割協議に加わり 相続手続きを進めていきますが、「法定後見制度」を利用する場合、原則、被後見人である母に、法定相続分 (ここでは2分の1)を相続させなければなりませんし、また、相続手続きが完了しても、被後見人である母が存 命中は、後見を止めることはできません。
家庭裁判所が選定する後見人は、専門家がほとんどで、弁護士や司法書士が選ばれることが多いです。彼 らは専門家ですので報酬がかかります。月2万円から6万円、母が10年生存したとすると、240万円から720万 円かかることになります。後見人とはいえ、全く見ず知らずの人が親の財産を管理し、家族を守るのではなく、 認知症になったその人の財産を保護することが目的ですから、家族にとっては鬱陶しい存在になります。
さらに、認知症になると判断能力がないので、法律行為は無効となってしまいます。例えば、父が認知症に なった場合、売買契約を締結することご出来ません。判断能力のない状態で締結された売買契約も、無効と なってしまうのです。
■認知症対策とは
認知症対策とは、財産凍結対策です。事前になんらかの対策を講じておくことが非常に重要なことです。
認知症対策には、名義を変更するパターンと事前に代理人を決めておくパターンと2種類あります。親が元 気なうちに名義を変更しておく、家族信託や、生前贈与などがあります。名義変更した財産は、凍結リスクを 回避できます。これに対し、代理人のパターンとして、親が認知症になることに備えて、事前に代理人を決定 しておく成年後見制度の中の「任意後見制度」があります。ただし、家族信託であれ、任意後見であれ、「いず れも法律行為」ですから、判断能力が十分ある場合に実行しておかないといけません。人生100年時代を迎え、 「相続対策」を行っておくだけでなく、また、遺言や生前贈与だけでなく、認知症対策も、あらかじめ実行してお く必要があります。
認知症対策の基本は、任意後見制度と家族信託という制度を利用すべきです。特に、家族信託をいかに上 手に活用するより他ありません。そして、認知症対策を段取りしておいてから、相続対策に取り組めば、安心 して「相続対策」を続けることができます。
次回は「成年後見制度」の説明と問題点、さらに「家族信託」の解説をしていきたいと思っています。
【相続】相続手続き、進む効率化!預金・不動産、一括照会が可能へ
相続が発生すると、亡くなった人の 相続人を確定するために、亡くなった 人の出生から死亡まで繋がった戸籍 が必要になります。亡くなった方が遠 方であったり、転籍を繰り返している 場合、収集するのに労力を使いまし たが、令和6年3月から亡くなった人 等の戸籍が最寄りの役所でまとめて 取得できるようになりました。
さらに戸籍に続き、亡くなった人の 預金を一括で照会できる制度が25年 3月末、不動産は26年2月に始まる予 定です。
預金を一括で照会するには、マイナンバーを活用 した「預貯金口座管理制度」を利用することになりま す。個人が取引している金融機関とマイナンバーを 紐づけすることで一括照会が可能になります。
不動産の一括管理には「所有不動産記録証明制 度」が26年2月から始まります。法務省が登記簿の 名義人毎に全国の所有不動産をリスト化し、名義 人が保有している土地や建物の種類、所在地、面 積等の情報を一覧できるようになり、請求が名義人 のほか、相続人等が情報を請求できます。
戸籍に加え、預貯金や不動産を一括照会できるよ うになることは、相続人の労力減につながりますの で嬉しい制度ですが、生前に全ての財産が把握さ れてしまうことへの抵抗は少なからずあるかもしれ ません。
【保険】 保険のお話しパート27 ~がん保険の入り方パート6~
今回はがんの薬物療法である分子標的薬をご紹介します。
従来の薬物療法はがんのある場所や進行段階によって薬剤を選んでいました。近年は遺 伝子研究の進歩によって、より患者個人に合わせた「ゲノム医療」へと発展しております。
この「ゲノム医療」では、がん組織の遺伝子変異に基づいて薬剤を選択します。がんは遺伝 子に傷が付いて変異することが原因となる病気です。最近の遺伝子解析技術の進歩によっ てどのような遺伝子に変異が起きているのかを網羅的に調べることができ、その遺伝子変 異に適切に作用する薬剤があれば、より副作用の少ない効果的な治療が可能になります。 遺伝子変異を解析する検査には、「遺伝子パネル検査」と「コンパニオン診断」とがあります。
遺伝子パネル検査
標準治療が終了した時に検討される検査で、一度に100以上の遺伝子変異を調べその結果に基づき候補薬 があるかどうかを判断します。2万個以上ある人間の遺伝子のうち、がんに関連性のある遺伝子は数百個あ りますが、その数百個ある遺伝子を同時に解析し遺伝子変異を調べます。解析結果と過去に累積されたデー タを基に、専門家の検討会(エキスパートパネル)を経て候補薬を導き出します。遺伝子パネル検査は、がん ゲノム医療中核拠点病院等、専門の医師や設備が整えられている医療機関で受けることができます。
コンパニオン診断
治療の標的となる遺伝子を1個~数個調べ、分子標的 薬による治療が期待できるかを調べる検査。
例としては、分子標的薬 クリゾチニブ⇒適応症
非小細胞肺がん⇒検査項目 ALK融合タンパク等 分子標的薬 ペムブロリズマブ⇒適応症
固形がん等⇒検査項目 マイクロサテライト不安定性 等

【税務】 税務調査の傾向と対策
日本人選手団は好成績を残し、たくさんのメダルの獲得とともに パリオリンピックが閉幕しました。熱狂と感動を与えてくれたアス リートたちに、ありがとう!という気持ちでいっぱいです。
ところで、オリンピックに関して税務面の話題を業界誌で見つけま した。以下、日税ジャーナルの記事からです。
日本オリンピック委員会(JOC)のホームページに、「オリンピックは4年に一度開催さ れるスポーツの祭典です。人間育成と世界平和を究極の目的とし、夏季大会と冬季大 会を行っています。」とあります。しかし、これを額面通り受け取っている人は、もはや 誰もいないのではないでしょうか。オリンピックは、とてつもない経済的な恩恵をもたら す事業として、多くの利権屋たちが群がる実態があることが、近年の様々な事件から 明らかになってきました。
皆さんの記憶から遠ざかっているかもしれませんが、2020年の東京オリンピックの準備 と運営を取り仕切った東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事の高橋 治之が、オリンピックの利権を得て甘い汁を吸った一人として、受託収賄などで逮捕され たのは周知のとおりです。
さて、この日本オリンピック委員会(JOC)は、公益財団法人で、現在は柔道の山下泰 裕氏が会長を務めていますが、2024年3月6日の新聞報道で、東京国税局の税務調査 を受け、2018~22年度の会計処理に関して、国税と地方税含めて約20億円の追徴課税 を受けたことが明らかとなりました。20億円という金額の多さに改めて驚かされますが、 これまで聖域であると思われていたオリンピックが、実は利権の温床であったことが、高 橋治之の事件によってはからずも明らかとなり、この追徴課税はそれが波及した結果の 一つと推測されます。
申告漏れが指摘されたのは、JOC側の説明によると、収益事業であるマーケティング 収益の計上時期にずれがあったという点と、JOCに加盟する他の競技団体(NF)の会計 処理支援センター事業費を収益事業の直接の費用にしていたという点でした。
